*グランプリ  『しあわせならたいどでしめそうよ』   監督 佐藤福太郎
*準グランプリ  『ネコ魔女のキポラ』   監督 藤原智樹
*審査員特別賞  『魔眼』    監督 伊藤淳
*奨励賞    『憂鬱ロケット』   監督 坂下雄一郎 

 

*ゲスト審査員の審査評
井上朗子 (にいがた映画塾代表、映像作家)
東條 政利(映画監督)
五藤 利弘(映画監督
中野 太(脚本家)

◎「しあわせならたいどでしめそうよ」
はじめは、先生もお父さんも美男美女で、タロも意外と小ぎれいだったので、どうもリアリティが見出せなかったのだが、途中から、感情のすき間を上手に表現し ているなと感心した。いいセリフいいカットがあったと思う。しかしもう少し枠からはみ出るものが欲しかった。(井上)

最初たくさんの ウサギと子供、子供が数えられないくらいたくさんのウサギがいたのはいいなあと思いました。映画としてそれぞれのシーンが充実している一方で、作り手の遊 び心も満載で面白かったです。タロのしあわせかどうかの問いを無視して、「しあわせなら手をたたこ」を歌うというのがすごいなあと思いました。その後、タロも歌いましたが、もう歌うしかないんでしょうね。それで、あの段ボールから「バイバイ」と出て行けましたし。好きな映画です。(東條)

タ ロと女の子の出会いが、タロから声をかけていたのが、ちょっと不自然だった。カット割り、画の構図が上手い。出会いのキッカケを工夫したらとてもよくなる と思う。男と少女の心の交流がとても丁寧に描けていていい。セリフ前後の小芝居や細かい芝居がユーモアがあり面白い。話し過ぎないのが良い。(五藤)

小学生の女の子がプーのオジサンを飼うという発想がいい。二人の会話もユーモラス。やがて悲しき。オジサンの痛み。力がある。(中野)
作品時間 29分  監督 佐藤福太郎 キャスト 大作空、荻山博史、今村有希
しあわせならたいどでしめそうよしあわせならたいどでしめそうよ2
作品時間 20分  監督 藤原智樹 キャスト 堀井千砂、奈良本 一也、
坂田めぐ美、矢崎まなぶ  
ネコ魔女ギボラ
      
◎「ネコ魔女のキポラ」
背景やマックスの質感まで、細かく丁寧に描き込まれている。多少移動撮影のカメラワークが多すぎるように感じたが、カット割り、ストーリー展開の完成度が高くインディーズ作品として採点するのはむしろ気が引ける。(井上)

絵もきれいで、ストーリーも絵に合ったいいお話でした。ロボットのキャラクターも汚れ具合もいい感じで、親しみがもてました。ネコがもっとかわいかったらもっと好きになったのにと思いました。(東條)

ア ニメーションのクオリティが素晴らしい。画のクオリティだけで見ると満点かも。心あたたまる話で好感を持てた。ただ、グット迫る感動まで到らなかったの は、猫とロボットの心の交わりが少なかったからだと思うので、そこがもう少し描けていたらもっと話の完成度が高まると思う。(五藤)

なぜ魔法使いになりたいのか。空を飛ぶ練習しかしてないが、空を飛んでどうしたいのか?それがみんなを幸せにするのか?「魔女の宅急便」は配達という目的があったが。すぐにバレる嘘を吐くのは優しさではないだろう。(中野)
◎「魔眼」
80年代の邦画にはこういう作品が結構あったと思う。古いといえば古いが、ワケのわからないことが多くなってきている今、こういう作品を作る姿勢は支持したい。女性の心理の描き方などは、最終的に惜しい。(井上)

始 まりから、目を釘付けにされました。恐怖の原因がわからず、その謎について興味をもちながら、映画に引き付けられます。また、主人公の女の子が自分の恋人 の男が他の女とデートするところを見つけて、ブロックをもって車に乗り込んだりというところは好きです。音楽の付け方も、効果的だったと思います。ただ、 終わらせ方が不満です。何か、いろいろな映像をインサートして説明的なこともしながら、それが思わせぶりなだけという印象しか残らないように思いました。 必ずしも、お客さんに何かをわからせる必要はないとは思います。けれども、何か、恐怖を観客の心にのこすとか、何か、強い余韻を残すことができたら傑作 だったように思えます。(東條)

どのような展開になるのか興味深く観ることが出来た。演出や描写も上手い。ただ、妄想?の描写が過度 になり、笑ってしまうところがあったのが惜しい。また、主役の深層心理なのか、どうしてこんなに病んでいるのかが見たかった。最後、観客に委ねる手法を とっているが、結論の説明を逃げているように感じてしまったので、観客が思いを巡らす分かりやすいヒントが欲しかった。(五藤)

目を背けたくなる描写。彼女の心の闇が見える。ジリジリと引きつける。映画だ。(中野)
作品時間24分   監督 伊藤淳 キャスト 谷更紗 、小田篤、渡辺美穂子
魔眼
作品時間24分   監督 坂下雄一郎
憂鬱ロケット
◎「憂鬱ロケット」
「田舎」も「高校生」もうまく描けていないが、「映画」を少しつかみかけている感じはした。しかし、「ゆれる」以降吊り橋を撮ってはいけないと思うしレールやクレーンも覚悟なく使ってはいけないと思う。(井上)

どんなに走っても、ロケットを打ち上げても、どうにもならない閉塞感が感じられた。田舎の開放的な風景、躍動的な映像がさらにその閉塞感を引き立てていたと思います。面白かったです。(東條)

少 女のもどかしい想いが表れていてよかった。ただ、そのもどかしさが、少女のもどかしさというより、少女を通して作者が語っているように感じてしまうので、 そのもどかしさが少女自身のものであるように見えたら、もっと作品に入り込めると思う。もどかしさの表現が過剰だったり、叫んだり鳥居に八つ当たりするな ど新しさに欠けたりしていたのを、度合いや手法を替えたらいいように思う。(五藤)

目標のみえない女子高生のイラだち。心の変化があまり描かれていない。ロケットを飛ばしたからといって、何も変わらないということか。(中野)