第4回長岡インディーズムービーコンペティション

審査結果・講評(敬称略)

グランプリ

「桜の樹の下」 生山志乃

  • 素晴らしい映像美。ムードも良く姉妹も美しく、圧倒的な少女趣味の世界に浸ることが出来ました。ただ、作品解説と自分の解釈がちょっと違っていて、作者の意図するところが充分に伝わりきれていないのが残念です。
  • 今回応募があった作品で、私の一番好きな作品です。他の審査員からの評判も非常に高かったです。妹役の女の子、本当に可愛いですね。監督の知り合いでしょうか?それともスカウト? 全てに監督の美的センスやこだわりなどを感じました。
  • 正直言って、そのイメージがほとんどありきたりで、表層的にしか見えない。それといつの時代を語っているのかわからない。男のメガネは今の時代のもの。時代性を出すのなら細かい部分にもこだわるべき。フィルムで丁寧に撮っている事はいい。

 

グランプリ

「奉行の恋」 熊谷直子

  • ナベで男と女の違いを描きながら妥協点にたどりつくまで好感度が高い。
  • これは恋愛経験のある人ならきっと誰もが、「あ、わかるわかる」と感情移入して観ることの出来る作品だと思います。私もそうでした。最後の雑炊とうどんはちょっぴりジーンとしました。
  • ほのぼのとした気持ちのいい作品でした。相撲部の友人の存在が非常に効果的で、二人の恋心がより際立っていました。インパクトのあるタイトルもGOOD!
  • リズム感が欠けている。音の使い方にも工夫がなされるべき。 細部に気を配ってほしい。これを映画として撮っているのか。何か曖昧である。 時代性という光を感じない。山形をバカにするなとか、まわしからケイタイを出すところとかは、笑えた。

 

準グランプリ

「その男が俺に与える不安」 鶴岡幸治

  • うまい、良く出来ています。ともすれば破綻を来しやすい構成を取りながら、無理なくまとめる力量は素晴らしい。主役の彼の最後の表情は演技賞ものですね。
  • 最後の犯人の顔がとにかくすごい。江口寿史のマンガで、凶悪犯を描いた8コマオチくらいの1頁マンガがあるのですが、その犯人の顔にそっくりでした。いちばんあやしくて一番まともだったあの刑事の顔もインパクトがあったけれど。顔といえば犯人が片想いしていた女優の方、すごい美人ですね。とにかく面白かったです。2回観ましたが、オチがわかっていても楽しめました。
  • オチが弱いものの、これから何かしてくれそうな才能を感じた。
  • 昨今のアメリカ映画の手法に感化されすぎている。オリジナリティを追求してほしい。ストーリーは惹きつける要素が欠けている。タイトルも練るべき。もっと丁寧に仕上げて欲しい。音楽も。

 

 

審査員特別賞

「ガリレオ」 藤浪元史

  • 斬新な作品、アイディアの勝利ですね。作者の苦労が偲ばれます。ただ一発芸的作品ゆえちょっと飽きてしまいます。後半の展開にもう一工夫欲しかったですね。
  • アイデアがいいですね。あとおふたりの「無表情の顔」が最高です。吉田戦車のコミックみたいでした。
  • どこぞのMTVにネタを提供できそうだが、男のルックスへのゆるぎない自信がなんか気になる。
  • アイディアは面白いが、世界観が広がらない。大金はたいていもっと滑らかに回転できる装置にして、全世界、宇宙まで行ってほしい。キャラクターもあるけれど、途中で他の誰かが(女の子とかおばあさんとか犬とか)入れ替わったりしたらいいかも。メメントのような手法はやめてほしい。蛇足。更なる展開を見たかった。

 

 

審査員特別賞

「アイノ・ウタ」 古本恭一

  • 編集・テクニックとも素晴らしいものの、退屈であるのはいかんともしがたい。
  • 主人公の男と女の生きてきた背景が消化不良のため今ひとつ入りこめない。なぜ離れたくないほど激しく愛し合ったのか。それが伝わらないのでダレてしまった。
  • 古本さんの作品は、審査員で賛否両論ぱきっと別れた作品でした。私は女性として、彼女の自殺が理解できませんでした(スミマセン)ただ、二人の出逢いのピアノのシーンは本当に、本当に美しいですね。それからオープニングの水のシーンから主人公が自転車を漕いでいる最初の数分間も大好きシーンです。ドラマチックな展開は(その後にありますが)そのシーンでは何もないのですが、何度観てもなぜか大好きな部分です。
  • 力量は感じられるのですが、女性の感情が伝わって来ず残念。なぜ彼女は屋根を見上げて泣いているのか、なぜ自殺しなければならなかったのか、彼女の心をもう少し丁寧に描いて欲しかったです。エピローグ、プロローグは果たしてこの作品にいるのでしょうか?

 

入選作品


「がいな奴」 土居一公

  • 青空の下のうどん屋での無差別殺人の勢いと凡庸な人生の対比がえらいスピード感で一気に見れたが、メッセージが多い。
  • 冒頭から殺りくまでの引込んで行く演出である面圧倒されたが、突然卒業アルバムの年表を見ているような蛇足的な表現で一気に興覚めしてしまう。構成をもっと練っていたら、かなりのレベルの作品になった。
  • 大好きな作品です。2回観ましたが、2回とも泣いてしまいました。「人が殺される」「命を奪われる」という事実の報道されない真実の姿を感じました。ただ事件だけをピックアップするのでなく、被害にあった一人の男性の生涯を走馬燈のように見せる手法は脱帽です。
  • 面白い。が、虐殺シーンは意見が分かれるところ。犯行の不条理さを訴えるための表現ならば甘受できるが、どうもエンターテインメントとしてあの手のことがやりたかったような印象を受けてしまいました。


「したたる部屋」 田部宏太郎

  • フェチっぽさがたまらない。それに尽きる。
  • アップで見せ切るアイディアは良いのだが、編集が緩慢でテンポが悪い。役者の動作も関係している。音の効果ももっと考えるべき。ピンクやロマンポルノ的なネチョッとしたエロチシズムはいい。
  • 前回の作品とは作風が全然違っていて驚きました。一切、顔が映らないっていうのがいいですね。でも男の人は目がチラッとうつって何となく全体がわかりましたが。でもそれがかえってよかったです。彼が「竹之内豊」とか「窪塚洋介」みたいなスーパーハンサムだと、女同士の鞘当てが本当に陰湿な感じがして、観ていて辛かったと思います。いろんな意味でいやらしい映画なのに、全然、いやらしくないのは監督のセンスによるところが大きいと思います。最後の「フッ」としたオチもとってもよかったです。
  • 前作とうって変わったフェチな作品ですね。顔を出さない演出が想像力を駆り立てて効果的です。でもどうせやるならもっと徹底的に際どく迫っても良かったのでは?


「日曜日」 馬上修治

  • ルックスも役柄もン・ジャンコーそっくりな俳優がイイが、センチな割にはもう一つ届かなかった。
  • 最初、なんてクサイ展開なんだろうとアキレ気味だったが、中盤からグッと話が締まり、引き込まれてた。なかなか泣かせる話。小道具も無意味でなかった事がしっかりと伝わった。ラストがもう一つ展開できなかったものか。残念!!
  • 何となく、話のラストは見えてしまったのですがそれでも「もしかしたら…」と最後までハラハラ観てしまいました。主役の方、ハンサムですね。今回はシリアスな役でしたが、コメディもいけそうな雰囲気を感じました。
  • ありがちなストーリーではあるけれど、主役の彼のキャラクターと安定した演出で安心して楽しめました。ラストにもう一捻りあると、感動度が増したのでは?


「窓」 町野弘幸

  • スリリングな演出力は突出しているが…
  • 冒頭、あそこで写真をとっていたら、窓の男はすぐ気付くはず、もっと細部に気を配って説得力をもたせてほしい。違和感を感じるので入り込めない。住宅殺人をするのもどうかと思う。 場所的には郊外の旧家にして、木蔭からこっそりとる方がよい。
  • 怖かった。最後のシーンはゾゾゾーッですね。
  • 良くも悪くもヒッチコックを連想させる作品。演出はいいのですが、場面設定に疑問が残ります。


「クラスメイトは鉄砲玉」 繁田健治

  • 愛すべき中年趣味。徹底的にアナクロな演出が妙に心地良かったです。ただ、ノレない人にとっては悪趣味以外の何物でもないので、難しいところです。最後はちょっと蛇足?
  • 監督の瞳ちゃんに対する強い愛情を感じました。ホテルのベッドでカラオケしながら、小首をかしげるところなんか、女性の私が見ても「可愛いひとだなぁ」と思ってしまいました。
  • 太田裕美のリバイバルが来ると思っている者としては先駆けの映画かも知れないが、共感を呼ぶヒロインかどうかが別れ目か。
  • 雑である。古臭い。あの時代のムードを再現したいというのならわかるが。ただし、浜辺の修学旅行の再現はヘタなのが幸いして笑えた。