第8回長岡インディーズムービーコンペティション
審査結果報告
この度は、ご応募いただきまして誠にありがとうございました。63本の応募作品の厳正なる審査の結果は下記の通りとなりました。惜しくも選にもれた方、来年もご挑戦下さいます様よろしくお願いいたします。
グランプリ 「お願い。誰か」 監督 吉木敏博 (岐阜)
準グランプリ 「夏音風鈴」 監督 勝又悠 (神奈川)
監督賞 「バラ色フリーウェイ」 監督 古市勝久 (東京)
脚本賞 「天使の樹海」 監督 藤田重和 (東京)
審査員特別賞 「See you」 監督 横山善太 (東京)
最終審査について
日時:2007年8月19日(日) 13:00〜18:00
場所:長岡商工会議所 3階会議室
ゲスト審査員:
井上朗子 映像作家
五藤利弘 映像作家
ビューラ・ヨールグ 長岡造形大学准教授
矢部孝男 にいがた映画塾元代表
審査員:
菅野勝一 第12回長岡アジア映画祭実行委員長
他
司会:
関矢茂信 市民映画館をつくる会事務局長
最終審査に残った他の作品
「泡になる」 監督 浅井一仁 (22才・神奈川)
「グラウンド」 監督 下倉功 (47才・千葉)
「ROOMMATE」 監督 伊藤秀隆 (29才・東京)
「屋上の夢」 監督 藤橋誠 (31才・栃木)
「労働者」 監督 Darryl Knickrehm (ダリル・ニックレム) (27才・兵庫)
事前審査につきましては、長岡アジア映画祭実行委員会により行いました。
表彰式・作品上映
日時:2007年9月17日(月・祝) 16:10〜18:30
場所:長岡リリックホール
上映作品:「お願い。誰か」「夏音風鈴」「バラ色フリーウェイ」の3作品を上映いたします。また特別招待作品として「ハミングライフ」(監督:窪田崇)の上映も併せて行います。
市民映画館をつくる会 会長 高橋 芳昭
長岡アジア映画祭実行委員長 菅野 勝一
2007年9月吉日
グランプリ 「お願い。誰か」 監督:吉木敏博 (岐阜)
監督コメント:この作品は離婚をテーマに自分の気持ちをうまく表現できない親子のストーリーです。子供の気持ちが立場とは関係なく大人達の都合で離婚していく勝手さを少女のせつなさと共に表しています。
審査員評:
離婚の問題を一番苦しんでいる子供を中心に描いた作品です。子供の目線で見た世界がうまく伝わってきて感動させられます。(ビューラ)
ラフに撮っているようだけどなかなか賢いつくり。不器用な味わいがあった。それを最後の歌で説明しているのがちょっと残念。(井上)
冒頭から主人公の少女を描く流れ、カット割りが上手い。親子、家族の距離感、生活観にリアリティがある。じっくり描いてあった。が、もう少しテンポがあると尚よかった。(五藤)
子供の気持ち父親の気持ちがストレートに伝わる優しい作品。子供の演技がとにかくすごい。弁当などの小道具も効果的。(矢部)
少女にとって世界が変わった問題を描きながら結局問題は解決されずに映画は終わる。この時間に収めることは難しい題材。(菅野)
準グランプリ 「夏音風鈴」 監督 勝又悠 (神奈川)
監督コメント:来年からこの街を離れ、東京へ行く事を決めている私。最後の夏がやってくる。青空、田園、2人語った川沿い。淋しいけれど、仕方がない。それが前を見るという事。そんななか、友達の恋の相談にのる。でも、その結末が私を抱きしめて離さない。リンリンと揺れる。それはまるで風鈴のように。
審査員評:
綺麗な色で撮り、ふわふわの夏をイメージした気楽な感じの話。それでも少女の苦しい気持ちを表現できました。時々俳優の演技がちょっとオーバーだと思いましたが、高校生はそのようなものだろう。(ビューラ)
細かい言いまわしなど、なかなか書けない脚本。Tシャツを短パンに入れたり、そんな演出もよかった。出演者一人一人、心の葛藤が感じられた。映画の空気が感じられた。ナレーション、音楽がないともっといい。(井上)
タイトル前の入り方が観る側を引きつける感じがした。セリフが自然で上手い。役者の動きとカメラの動きが上手く自然。ストーリーも誤解から生じる心の機微や、この年代の少女たちの心の揺れをうまく現していたのが心に残った。監督のみずみずしい感性に将来が期待できる気がする。(五藤)
田舎町の女子高生のひと夏という背景はいいが、どうも今関あきよし的少女趣味映画にしか見えない。どう見ても風が主人公的だがラストカットとナレーションが春なのがよくわからない。恋の言い争いするカメラポジションもちょっと位置違うかな?と。(矢部)
前作は4人の少女を撮るだけで満足してるのではと疑ったが、今回は核となるストーリーがあり、見応えがあった。今後もこの四人を撮り続けてほしいと思う。夏の切なさがうまく描かれてた。(菅野)
監督賞 「バラ色フリーウェイ」 監督 古市勝久 (東京)
監督コメント:人生をやり直すチャンスは意外なところにある。ひょんなことから出会ってしまった銀行強盗二人組みと中年男、三人の男たち。一台の車と共に走り出す男たちの再生の旅。
審査員評:
タイミングやペース、オチ、等が全て上手く構成されており、脚本から編集まで良くできたストーリーです。見やすくて観客を一時も退屈にさせない作品。(ビューラ)
スートーリーもありきたりで単純だなあと思うのだけど、なぜかおもしろい。音楽性がある。哀愁がある。映画の力を感じさせる。(井上)
何かを期待させるファーストカット。タイトルの出し方など考えられている。軽いタッチだが、人間の悲哀がにじみ出ているのがいい。カットつなぎが上手いし絶妙なラストにうなった。ただ、二人組みの人生模様が一方的なせいかもう少しリアリティ不足なのが残念。(五藤)
マンガ的な構成、ラストのどんでん返し、星新一短編的で凄くいい。この作り方は大好き。テンポもすごくいい。(矢部)
テンポ良くだれることなく主演の三人も素晴らしい。が、どうしてもオチには賛同できない。(菅野)
脚本賞 「天使の樹海」 監督 藤田重和 (東京)
監督コメント:「ネット心中」「自殺」をとり上げ、人間の「生と死」の関係を「個人と社会」との関係に関連させ、「生きる」とは何かを浮き彫りにしたハートフル・ファンタジー。
審査員評:
すごく面白い。変わったシチュエーションを考えましたね。何回も笑わせられました。ただ残念ながら撮影の技術はちょっと不十分でした。特に、しぼりやゲーン、シャッタースピードの調節と音声の技術。(ビューラ)
見ていて楽しかった。できる範囲でうまくやっている。この監督さんは器用貧乏なりそうで心配だ。(井上)
ところどころに面白い要素が見られたが、誰に感情移入していいのか分かりづらく、1つのストーリーとしての組み立てが粗い気がした。作りこんだら面白くなるのでは。(五藤)
とにかく星新一的ユーモアは大好きだ。ラスト引っ張りすぎじゃないかと思ったが引っ張るなりのオチも準備してていい。ただノイズの悪さは問題だ。(矢部)
序盤は期待できたが肝心の天使が現れてからおかしな展開になったのが悔やまれる。(菅野)
審査員特別賞 「See you」 監督 横山善太 (東京)
監督コメント:35ミリスチールフィルム写真のみで劇映画を作るという試み。主人公のヨシミ(25)は自殺をしようとした直前、別れた彼女サイカ(25)の幻を見る。ヨシミは死ぬ前にもイ1度彼女に会いたいと久し振りに家を出る。駅に着きお金がないと気付いたヨシミは、線路際を歩いてサイカの家まで行くことにする。
審査員評:
白黒の写真だけの制作がオリジナリティーのある表現方法です。写真の変換速度はうまく内容に合わせてあり、面白いリズムになっています。特に喧嘩のシーンにおいて映像と音声のずれは魅力があります。(ビューラ)
すごく、わかりやすく、引き込まれた。話の内容の割りに、きれいにまとまりすぎてしまっている。もう少し細部にリアリティがあryと良いかも。写真がきれい。特にサイカがきれいだった。(井上)
センスある画作りから、作り慣れた感じがした。ごくありふれた若者の日常を美しい映像詩で鮮やかに描いていた。感情の流れを主人公がモノローグで説明する試みが面白かった。ただ、自殺する若者の心の弱さにある背景を知りたかった。(五藤)
私小説的な映像としてこの静止画の手法はドンピシャリと感心したが、終わってみるとストーリーが自己中心的自虐的恋愛モノに終始してガッカリ。これは普通の映像で出来るであろう。手法と題材が一致したかった。(矢部)
ラストは同感できないものの、男のめめしさカッコ悪さみっともなさを全て網羅しながらスタイリッシュな映像でまとめ妙に引っ掛かる作品。夢、理想、希望が全てはねかえされるのは笑いさえこみあげる。(菅野) |