当地から映像作家を生み、さらにその作品の配給も目的にするこの部門。厳正な審査による入賞作品を上映。鮮烈な映像群にぜひご期待下さい。


第6回長岡インディーズムービーコンペティション 審査結果・講評
(敬称略)

グランプリ



22分 8ミリ作品
スタッフ:越智圭介/井ノ元圭介
/広野雄一/山田信行/他

「マリコ三十騎」 真利子哲也

  • 苗字の由来を語り出すくだりは面白く、このタイトルの理由が解け、そうなのかと感心してしまった。又、そのイメージの再現でもある海辺のシーンはなかなかガンバッテ撮ってると感じた。方法論的には例えば技術的な事だと8ミリフィルム、コマ撮り、ドキュメントタッチの同録。又、ストリーキングといったメッセージパフォーマンスは残念ながらやりつくされてきたもので、特にストリーキングは今の時代にやると滑稽というか何かどこかのバラエティ番組のお笑い芸人のドッキリパフォーマンス位にしか見えず、鮮烈さが全く画面から届けられなかった。ただし、この原動力や提起性においてはそれなりの実力を持っている事がうかがえ、さらにしっかりと次作も作り上げて行ってほしいと思った。
  • 自分のルーツを探るところがよかった。8ミリフィルムの山もよかった。母が出てきたのがよかった。三十騎の再現がよかった。大学構内でのことはまるでたいしたことでないとわかっているのがよかった。「極東のマンション」があったからこそこの映画はよかった。「極東のマンション」での屋上のシーンの飛び降りはだめだ、下を歩いている人を巻き添えにするところだった。真利子さんの母が言う通り時間を無駄にする映画だった。無駄があったからこそ「マリコ三十騎」はよかった。あなたの母が言ってた「働かざるもの食うべからず」という愛情のこもった言葉がよかった。
  • 海のシーンは圧巻!ただただ引き込まれました!
  • 自分のルーツと向き合うことと、安易な時代の流れ(大学の無機質化、8ミリフィルムの衰退)に逆らうことが見事に融合しています。


準グランプリ

「あすかのたまご」 鈴木明日香

  • 構成を考えると興味深い題材なのだが、少々空回りといった気がする。部分部分で面白い描写はあるのだけれど。もっと緻密にじっくり撮ってほしい気がする。粗雑さも気になる。もう一度チャレンジしてはどうか。これは習作にして。もっと予算をかけてゴージャスに完成させるのもいいかもしれない。
  • 昨年の主演女優賞の鈴木さんの作品。どうしても客観的に観れず評価出来ない何かをプンプンと撒き散らしている作品でした。海での野球のシーン、部屋での元彼女の写真のシーン、そして、実家でのシーンととても印象に残りました。カモメのお菓子の歌は良かったです。鈴木さんの母、祖母の出演がこの作品を素敵なものにしてました。また、鈴木さんの存在感は応募作品のなかでダントツでした。
  • 前の彼女の写真を見つけて大騒ぎするシーンはお腹抱えて大笑いでした。やっぱりあすかさんのパワーはすごいと改めて思いました。
  • いつもながらあすかさんのパワーには感服します。河野さんやご家族の熱演も効果的でした。

「ただ聞く屋」 山城真希

  • 現実にあるとしたら、精神的に相当キツイ商売だと感じた。さて映画としてだが、ちょっとこぢんまりした内容になってしまったのではないだろうか。キャラクターたちの背景が見えてくる映像的なモンタージュも必要だったのではないだろうか。その点で奥深さが出て来なかった気がする。又、流れというかイマイチ歯切れが悪い気がして、もっと引き込ませる強引なリズムがあっても良かったと思う。今を表現する事においてももっと細かく注視すべきだったと思う。時代を感じさせないからだ。
  • 現実にただ聞く屋って商売が存在すると思うと評価出来ませんでした。屋台のデザインは良かったです。
  • おばさんのルックスも存在感もすごい。本当にこんな人がいたら…と思わず感じました。彼女の商売を敵視する青年の視点でこの仕事を描いたことで甘いファンタジーに良い意味で現実感が出たと思います。
  • 現実にあってもおかしくないようなリアリティのあるテーマで、良いところに目を付けたと思います。その商売に懐疑的な青年が効能を見出すくだりは見事。


審査員特別賞

「あるかないか」 西畠勇氣

  • 切り絵のアニメーションがインパクトがあって、実写との連動のリズムの中に何か恐怖を感ずる。怖い。ラストのシルエットの歩道橋はその切り絵と実写が融合したかのようなショットで意味を持つ。そんな訳で、まだまだ展開できたのではないかと思った。例えば女性とか第三者が介入してくるとかして。
  • 部屋のテレビが窓の前にあり遮っているのでテレビの位置を壁側に移動したほうがいいと思います。
  • 外の風景がまるで切り絵のようなシーンのインパクトは強かったです。ちょっと怖い作品ですね。
  • 切り絵のアニメーションという技法が非常に斬新です。もっと実写との有機的な融合がなされると世界が広がると思います。

「春を想ふ」 葛西勇也

  • 映像作りも手慣れているようで伏線の貼り方も前作同様なかなかのレベルである。が、少々ありきたりなお話に終始してしまったのはかなりのマイナス要素。もっと展開できたはず。突き動かされるような視点を求めたい。いやそれが期待できる作家だと思うのであえて苦言を呈する。さらに作品を連作して下さい。
  • 役者の演技がうまかったです。素直に観ることが出来ました。春風のように期待がふくらむラストでよかったです。
  • 彼女の打明話のホラー風の音楽に笑えました。誰かを好きになったときの気持ちが伝わってきて、胸がキュンとしました。
  • 彼女の不器用な愛情表現が愛らしくて素敵です。


審査員特別賞

「メビウス・ゲーム」 水ノ江知丈

  • いつも感ずるのだが映像表現でなく演劇調のセリフの切り換えしに終始するのがマイナス。しかし内容的にはかなり興味をそそるものがある。でも手錠の演出には苦しいものがあって人によっては興醒めするだろう。映像表現と音(音楽も含む)の効果にテンポモンタージュなどの一工夫がほしかった。演劇の場にカメラが入ってカットを割ってるだけの作品が氾濫しているのでその辺は映像としてとらえる視点を意識して作り上げてほしい。
  • 全てが芝居がかっていて笑えない。ラストの男3人の会話は最悪だった。しかし、秘書が言ったレントゲン写真の嘘にはまんまと引っかかってしまった。
  • ダントツで素晴らしい!!脚本、監督、出演者全て素晴らしい!映画の内容とは関係ないのですがメガネの秘書と不倫していたあの彼は「菅直人」ソックリですねえ。
  • 良く出来た人間劇でオチも最後まで読めず楽しめました。秘書役の女性は強烈な個性があります。