作品紹介「GOOD YEAR」
GOOD YEAR
2015年 / 日本 / カラー / 20分 / BD
監督:林 海象
出演:永瀬正敏、月船さらら
山形の廃工場。何かが蠢く水槽の側で、男が何かを造っている。クリスマスのある夜、1人の女が現れる。家族を捨て、東京を捨て、すべてを捨てた女。林海象が新天地、山形で生み出す、短編三部作の第二話。
公式サイト
予告編
監督プロフィール
1986年『夢みるように眠りたい』で映画監督デビュー。『私立探偵濱マイク』など数々の話題作を監督。京都造形大にて学生と共に「彌勒」を製作。革新的な映画公開に話題を呼ぶ。2014年東北芸術工科大学映像学科学科長就任。
映画祭スタッフより
林海象監督の「GOOD YEAR」に酔う。
「海象美学」を堪能させて頂きました。
多くは言えませんが、モノ造りをする永瀬さんの目が良いです。全部捨てた月船さんの目が良いです。
この映画が今後、どういう展開を見せるかわかりませんが、是非とも多くの方に見てもらいたいと思います。
(大山孝彦)
映画『GOOD YEAR』に寄せて
光と影。陰と陽。人間の歴史には、そのどちらかに属するそれぞれの出来事があって、中でも負の歴史は時と共に忘れ、明るく日の当たる方にばかり目を向けたがる。人間とは、きっとそういうものだ。
だとしても、決して風化させてはいけない出来事がある。喉元を過ぎてしまっても、忘れてはいけないことが。
雪の積もった片田舎の町、そこに佇むうらぶれた工場。曇天の空に浮かび上がる、「GOOD YEAR」の文字。工場のシャッターの奥では、男が一人、なにやら一心に作業をしている。細長い金属片を球体に繋げた、まるで地球儀のような形の代物。何に使うものなのかは分からないが、男は真剣な眼差しで、それを回し、油を差し、動きを確かめている。男の傍らには、黒い水で満たされた巨大な水槽。壁は、福島第一原発に関する新聞記事で埋め尽くされている。
物語は、この男の「クリスマスの淡い邂逅」を描いている。
「邂逅」という言葉から抱く、甘く、切ないイメージに似合わず、スクリーンの中の色彩は始終、鈍色である。上映時間20分間の僅かな時間のストーリーを通じて、この男の背景にあるもの、東日本大震災がこの男に落とした影に思いを馳せる。そして、今も続く福島第一原発の事故、現在の復興の状況、そして、これからの日本の行く先を、ふと思う。エンドロールで彼は、覚束ない足取りで雪原の中をどこまでも歩いていく。映画を観終え、振り返って足を止めた我々とは、裏腹に。
蛇足ではあるが、この作品には、派手なオープンカーや、コマ送りで撮ったようなモーターの動きなど、所々に「濱マイクシリーズ」を彷彿とさせる場面がある。林海象ファンであれば、思わず「ニヤリ」とするであろうことを、言い添えておきたい。
(スタッフ S)