第30回ながおか映画祭開催のご挨拶
心優しい映画ファンの皆様へ
前略
皆様益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。ながおか映画祭も長岡アジア映画祭から数えて30回目を迎えることが出来ました。多くの方のご支援ご参加ご協力があったればこそ続けて来れたのだと思います。感謝!感謝!いたします。
早速、今回のラインナップをご紹介いたします。テーマは「多文化共生。異文化理解」です。先ずは台湾映画で今年日本中でスマッシュヒットを飛ばしているギデンズ・コー監督作品『赤い糸 輪廻の秘密』です。ちょっと怖かったりすごく笑ったりでも最後は感涙間違いなし!映画祭初期に目玉として選んでいた香港映画のような作品です。
次の 『パドレ・プロジェクト 父の影を追って』は日本人とアフリカ人の間に生まれ日本で“ハーフ”として育った芸人・武内剛(ぶらっくさむらい)さんが生き別れたアフリカ人の父を捜しに行く=ルーツを巡るドキュメンタリー映画です。
な、ナント、 『ノスタルジア 4K修復版』dす。アンドレイ・タルコフスキー監督の代表作をついに当映画祭にて上映出来ることとなりました。80年代ミニシアター・アート系映画=文化の代表作品です。是非この機会をお見逃しなく!金曜日夜どうぞ劇場へ。
さらに久しぶりにブータン映画『お坊様と鉄砲』です。ブータンで行われる初めての選挙。村の徳の高いお坊さんが言いました。「次の満月までに銃を二丁用意せよ」若いお坊さまは銃を探しに山を下りるのですが・・・。さて、私もまだ観ていませんがなんとなく楽しみなブータン映画の上映です。
アジア映画と言えばというより世界の娯楽映画の代表たるインドより新潟未公開の最新インド映画『バーラ先生の特別授業』を上映いたします。皆様の期待を裏切らない感動作です!
忘れていけないのは中国映画でありますが『卵と石』、『石門』の2作品です。『卵と石』は2012年ロッテルダム国際映画祭でグランプリ(タイガーアワード賞)を受賞した、 ホアン・ジー監督の長編デビュー作。『石門』は2023年 11月に行われた金馬獎(審査委員長アン・リー)で日本資本の映画として初めて作品賞を受賞しました。長年にわたって“女性と性”というテーマを描いてきたのがホアン・ジー監督と大塚竜治監督の共同監督作品です。入念なリサーチをもとに、現代の中国を生きる女性の姿を静謐なタッチで描き、世界各地で起きているジェンダー問題とオーバーラップしているかのごとく、現代のあらゆる女性が抱える問題に警鐘をならし、重々しい『石』の『門』を開く一条の光を求める作品です。
小林茂監督(1954年生まれ)作品は『わたしの季節』(16mmフィルム上映)を2年続けて行います。平日の午後日頃お忙しい方もゆっくりと時間を作ってご覧ください。戦後80年の今年を考えた時にびわこ学園は1963年に開設され63年を迎えています。映画は2004年に公開されていますからそこからも21年経っています。柳澤壽男監督の1982年公開の記録映画『そっちやない、こっちや「コミニュティ・ケアへの道」』でスチール担当として20代の小林茂氏が参加している作品こそがびわこ学園で撮影されたものなのです。20年経ったびわこ学園を訪れた小林氏は愕然としたと当時語っておりましたが20年振りが全く変わっていなかったと。
『阿賀に生きる』(16mmフィルム上映)も1992年公開ですが戦後の歴史に大きく影を落としたものとして公害があります。新潟県では1965(昭和40)年に阿賀野川流域で水俣病の発生が確認されました。『阿賀に生きる』の登場人物も水俣病の被害者の方たちです。ここに30代の小林氏が参加します。阿賀に住み着いて映画を撮影します。この映画を作ることの中心人物が旗野秀人さんです。この映画はそれまでの記録映画と違い静かにそこに生きる人々をフィルムに生かした作品となり東京でミニシアターでロードショー公開されました。
そして、小森はるか監督最新(2025年)記録映画『春、阿賀の岸辺にて』に続きます。主人公は旗野秀人さんです。新潟水俣病の患者の方々と『阿賀に生きる』と関わった歴史も戦後80年の多くの時間の1部として上映いたします。
『風たちの学校』は秦岳志、川上拓也と小林茂監督作品に欠かせない次世代の映画人がスタッフの作品でありますし、更に監督の田中健太さんは1993年生まれであり『阿賀に生きる』公開の翌年に生まれています。未来につなげる上映になるのではないかと思います。
『隣人のゆくえ―あの夏の歌声―』はインディーズムービーでありミュージカルです。そして、歌も振り付けも15,16才が創作した奇跡の作品です。山口県下関市も長岡市同様に空襲にあい甚大な被害を被った歴史があります。戦後70年の節目に製作された作品です。大林宣彦氏も絶賛した哀しくも美しいミュージカルを上映いたします。
『無名の人生』はアニメーションです。『無法の愛』で長岡インディーズムービーコンペテションでグランプリを獲得した鈴木竜也監督がクラウドファンディングで得た生活費を持って東京から田舎に帰り1年半をかけて1人で作ったアニメーションです。忖度無、ぶっとびの1時間33分です。声優にも注目!中島歩さんも出演しています(ファンの方は是非)。
林海象監督ファンの皆様『罠 THE TRAP 4kデジタルリマスター版』、『遥かな時代の階段を 4kデジタルリマスター版』の2作品上映します。言わずと知れた濱マイク主演作品です。存分にご堪能下さい。監督トークもお楽しみに!!!
『リリアンの揺りかご』は映画祭スタッフからの提案で上映することになりました。昨年、当映画祭で小林茂氏等の鼎談で津久井やまゆり園事件をテーマとして行いましたが引き続き津久井やまゆり園事件を通して寛容と不寛容を描いた『リリアンの揺りかご』を上映します。神戸監督は記者として生活しておりましたが前述の事件に触れ「私の子も殺すのですか?」と犯人に聞きます。そして、ヘイトスピーチや歴史の改ざんの現場にも向かいます。
『瞽女さの春』
見どころ 目が見えない少女時代に親元を別れて厳しい修行をしていた瞽女文化は、1970年代まで新潟県に残っていた慈悲深い文化だ。令和6年新潟県文化補助事業として絵本「瞽女さの春」を原作者ますやまよしこの娘、増山麗奈が映像化。
最後の瞽女小林ハルさんに指導を受けた萱森直子が瞽女の親方役を演じ、萱森の弟子であり盲目の瞽女唄うたいの広沢里枝子がサトさあ役を自身の姿に重ね熱演した。
その時の唄が、70過ぎたみよばあちゃんの奥深くに残っている。(公式HPより)
長岡、上越などで撮影されており瞽女文化が丁寧にえがかれた新潟発の映画となっています。地元の多くの方から是非ご覧いただきたい1本です。
『長岡インディーズムービーフェス』は第27回長岡インディーズムービーコンペテションの受賞作品の上映と監督トークを行います。現在の日本を知ることの出来る作品が多いことも特徴です。また、自分に近いテーマの作品を見つけることが出来共感できる作品も多いです。司会は今年も青森からの観客の大山孝彦さんがA4のスケジュールを当日渡されて打合せ無しのぶっつけ本番で盛り上げます。
最後の紹介の前に、コレクション出前ボランティアの長谷川浩一さんが映画祭での展示を今年を最後に引退することになりました。どうぞ皆様長谷川コレクションを観に来てください。
『ガザからの報告』は第一部「ある家族の25年」、第二部「民衆とハマス」の2本立てと土井敏邦監督、小林茂氏の対談がセットになった4時間15分(休憩10分含む)のプログラムです。ガザの報道は大変少なくなりましたが現在も大変な状況であることに変わりはありませんし更に酷くなっている状況のようです。日本で最もこの地へ通った土井敏邦監督は小林茂氏とも古くからの友人でもあります。小林茂氏を通じて今回上映とトークと貴重な時間を作ることが出来ました。知ることが始める一歩になります。多文化共生と異文化理解をテーマとした当映画祭が世界のこどもたちに笑顔が戻る一歩となり子どもたちの未来が平和でありつづけることに少しでも貢献できることが出来ます様に。
草々
2025年8月吉日
コミュニティシネマ長岡 会長 関矢 茂信